愛媛県東温市の三奈良(みなら)という町にある
乗馬クラブで、1週間ばかり練習をしてきました。
ここの乗馬クラブは、父のと息子の二人の親子で経営しておりますが、特に宣伝もしていないので、会員数はわずかだそうです。
ですから、私が乗りに行くと、いつもマンツーマンで馬場を占領して教えていただけるので、非常に助かるのです。
しかも、他の乗馬クラブに通っている人に言わせると、ここの乗馬クラブは、馬場の状態も、馬の調教も、指導者の質も、超一流だということなのです。
馬場の下には、水はけをよくするためのパイプが通っているらしく、これはここのクラブのお父さんが一人でブルドーザーで土を掘り返して、幾日もかけて馬のために水はけの管を通したのだそうです。
ですから、普通の乗馬クラブだと雨が降ったあとは、地面がぬかるんで泥だらけになり、馬も走るのを嫌がるのですが、ここはそんな心配はないのだそうです。
また、馬の蹄鉄も専門業者などに頼まず、自分で鉄を買ってきて、
馬の爪にしっかり合うようなものを、自分でこしらえるのだそうです。
鉄を焼いて、トンカチでこんこん叩いて、電機やすりのようなもので削って
微妙な角度を調整してあげると、馬に乗った時に、お尻がぼこぼこはずんだりせず、
乗り心地がよくなるのだそうです。馬が走りやすいんですね。
こんなことできるインストラクターは普通の乗馬クラブには、ほとんどいません。
そして、ここが私が一番感動したところなのですが、
ここの親子は、馬が我がまま言っても、決して馬を叱らないのです。
他の乗馬クラブだと、「なめられたらいけないので、言う事聞かなかったらどんどん叱ってください」と言われるのです。
しかしここのクラブは、
「馬が言う事聞かない時はやね、馬の目をじっと見つめてな、『どうした?もうやりたくないのか?もう少しオレのために頑張ってくれるか?走ってくれるか?』って、やさ~しく声をかけてあげるんじゃ、そんな大きな声出さんでいいんやぞ、小さな声でも馬にはちゃんと聞こえちょるけんな、優しく話しかけてあげればいいんじゃよ。」
と、お父さんが言うのです。
「じゃけんど、馬に負けたらいかん。自分の指示はしっかり出して、馬に意志を伝えなきゃいかんぞ。馬はそれだけで分かる生き物なんじゃよ。」
この話には、馬肉になる寸前の馬をこの乗馬クラブに連れてきて、死からすくったお父さんの話が続き、「どうや?もう少し生きてみるか?わしについてくるか?」と声をかけて、うなづいた馬を連れてきた話があるのですが、私はその話に、感動してしまいましてね。この話は、後日詳しく書きますが、つまり、叱らなくても、普通の乗馬クラブにいる馬以上に、反応のいい馬を調教することができるんです。悪い事した時は、それは人間と同じでしっかりと叱りますが、大切なのは、馬の気持ちを知ろう、相手を理解しようとする、人間関係の基本とまったく同じことが、できるかどうかなのです。
そして、指導者の洞察力が素晴らしい。
私は、今回かなり気合を入れてこのクラブに乗り込んだのですが、
やはり自分の上達していくイメージと、実際の実力の差が縮まらず、
最初の2~3日は、けっこう頭を悩ませていたのです。
すると、ここの社長でもある息子さん指導員の方が、
そんな私を見て、ほったらかしていてくれたのです。
私は、手や足の角度をあーしろ、こーしろ、だとか、何歩走ったらあーしろ、こーしろ、右足だの左手だの、重心がなんたらかんたらと、ごちゃごちゃ言われると、まったく頭の思考回路が止まってしまうのです。特に、数字で言われると、もうアウトです。さっぱりあんたの言っている事分からん!になってしまうのです。
ですが、ここの指導員の方は、
「自由に、自分のやりたいように乗ってください、馬とよく話をすることが大事です。それで聞きたい事があったら聞いてください。」といって、自由にさせてくれたので、私の意識が馬に向かう事ができて、馬が何故腹を立てるのか?どういう時に、どんな我ままを言うのか?そんなことが分かるようになってきたのです。
「みんなに自由に乗ってくれって言うわけじゃなかけんね。紅竜さんの場合はそれがいいと思うたけん、そうしたけんど、細かく支持ださなきゃいかん人もおるんよ。」
です。
この方のおかげで、私は馬と対話をすることができました。
すごい収穫、予想外の収穫でした。
また、料金が安くて、ビジターなら一鞍(約45分間)、4,000円という、この業界の相場では、なんとも良心的な料金で乗ることができます。しかも、45分間の騎乗時間などあってないようなもので、他に誰も予約がなくて、馬のご機嫌もいいようなら、1時間以上乗っててもかまわないというのです。
私が行っていた一週間は、すべてピーカン照りの強烈な暑さで、一滴の雨も降らなかったので、昼間練習したら、人間も馬も熱射病にかかってしまう、ということで、午後、日が沈む7時ごろから練習していました。
この東温市というのは、四方を山に囲まれていて、東西南北、どこを見ても山が見えるのです。そして、この三奈良という町には、3本の川が流れていて、水がとっても豊かな町なのです。
水が豊かな町に住んだ事がある、もしくは少しの間でも滞在した事がある人は、分かると思うのですが、とにかく居心地がいいのです。
食べ物が美味しい?人々が穏やかで親切?子供たちが元気?よく眠れる?邪気がない?
色々体感した感覚を理屈にすることはできるのですが、なにはともあれ、一言で言うと気持ちがいいのです。
また、秋に行こうと思っています。
今度は、それほど長い期間滞在できないでしょうが
馬との一体感は、ある種のエクスタシーのようなものを感じます。
何かと一体になると言う事そのものが、エクスタシーなのかもしれないです。
相手が男性であろうと女性であろうと、子供であろうと、生徒さんであろうと、犬猫、植物、鉱物、魂の使命,、にいたるまで、対象は何であろうと、人は一体感によるエクスタシーを求めているのかもしれない・・・。